エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「5Aのお客さまなんだけど、お酒が入っているようなの」
「すみません、気づかなくて……」
 ビジネスクラスの乗客はラウンジも利用できるため、機内に入る前からアルコールを飲んでいるというお客さまも多いことは確かだ。

 莉桜も注意してよく見ていたのだが足取りや顔色だけで分かるものでもない。だからこそ、クルー内での共有が大切なのである。
「大丈夫よ。足取りもしっかりしていらっしゃったから。お荷物のお手伝いをした時にアルコール臭があって。気を付けて差し上げてね」
「はい。承知しました」

 最近のビジネスクラスのシートはプライバシーを重視し、扉がついてボックス型となっているところも少なくはない。今回莉桜が搭乗した飛行機はまさにその最新の機材でビジネスクラスのシートには扉がついて個室型になっており、ゆっくりとくつろげるシートを搭載したものなのだ。
 そしてそのお客さまが座っている5Aのシートは莉桜がサービス担当となっている席だった。

 大島からアサーションがあり莉桜はギャレーからちらりと席を覗くが、ついたてがあるビジネスクラスの席は中の状況を確認することができない。
(注意しておこう)
 莉桜は心の中でつぶやくに留めておいた。
 
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