エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 莉桜は担当のシートブースのドアを軽くノックする。
「恐れ入ります。お客さま、お飲みものはいかがですか?」
 そして例の5Aのお客さまのシートももちろん確認をする。

「ワイン、シャトーマルゴリア」
 確かに顔は赤くなっていないが、少しアルコール臭がした。上空だとお酒の回りが早くなるため、さらに飲んで大丈夫だろうかと莉桜は心配にはなったけれども今の時点でくれというものを断るわけにもいかない。

 しかもそのワインは本日のおすすめの高いワインなのだ。楽しみにしているお客さまもいるため、簡単に断れなかった。
 尊大な雰囲気や乱暴な物言いにも莉桜は慣れている。
 にこりと笑顔を返した。
「本日おすすめのワインでございます。ご用意いたします」

 ギャレーに戻った莉桜はワインのお客さまにはグラス、温かい飲み物を希望されたお客さまにはカップとソーサーなど、どんどん準備を進めていく。
 すべてのシートにサービスを終えた後はグラスやカップの片付けだ。トレイを手にして一つ一つのシートを回り、カップなどを回収してゆく。もちろん5Aシートもだ。
「失礼いたします。お済みになりましたコップをいただきます」
「お代わりをくれ」
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