エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 少し声が大きいのは先ほどより酔っているせいだと思われた。周りに迷惑がかかってはいけない。莉桜は笑顔を向ける。
「恐れ入りますお客さま、そちらのワインは大変好評でして、もう完了してしまいました。ソフトドリンクなどはいかがでしょうか?」
「酒が他にもあるだろう。俺はここの株主だぞ。この会社に貢献しているのだからそれくらいはできるだろう」
 さらに声が大きくなる。どんどん酔いは回っているようだ。

 莉桜にしてみれば株主だろうが社長だろうが、シートに座っている以上は他と変わりない乗客の一人なのだが、まさかそんなことは言えない。
「では、後ほどメニューをお持ちいたします」
「今すぐ持ってこい」
 その時だ、客にぐっと手首を掴まれた。
「きゃ……」
 まさか手首を掴まれるなどと思っていなかった莉桜は体勢を崩しそうになる。

「お……っと。酔っているんですか? 先ほどから声が大きくて迷惑しているんですがね。CA(キャビンアテンダント)は確かにサービスをするが、キャバ嬢じゃないんですからね。思い通りになるわけじゃありませんよ」
 ブースの外から声がかかって莉桜も驚く。慌てて頭を下げた。そこには長身の男性が一人立っていて、シートを見下ろしていたのだ。
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