エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「機体の動きがすごかった」
「実際はもっと揺れるのかもしれないけど、足元も悪い中案内しなきゃいけないんだよね」
　それぞれが感想を伝えあっていると、チーフパーサーがそれを見てにこにこと微笑んでいる。
「お勉強になったようね」
「はい。それはものすごく」

　すると、スーツ姿の一団が訓練室の中に入ってきた。『ビジター』のＩＤを首からさげている団体の中の男性の一人に莉桜は見覚えがある。
「こんにちは！」
　チーフパーサーが挨拶するとみんなそれに続いた。
　先導していたのは訓練部の部長だ。
「みなさん、こちらはこのシミュレーターを作った五十里重工の五十里部長です」

　莉桜は見つからないように、そうっと同期の影にかくれる。
　その隙間からちらっと見ると相変わらずの端正さとすらりとした長身に他のクルーはぼうっと見とれている人もいた。

「弊社のシミュレーターのお使い心地はいかがでしたか？」
「臨場感があると、クルーにもとても好評でした。訓練の時に実際の場でどのようなことが起こるか想定されていれば、落ち着いて対応することができます。素晴らしいシミュレーターです」
「皆さんのお役に立てたのならそれほど光栄なことはありません。開発部にも伝えます。非常に喜ぶでしょう」
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