エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 この顔は覚えている。いたずらっぽくて、意地悪な莉桜だけに見せる顔だ。
「なあ? 覚えているか? 二度目は偶然、三度目は必然。君と俺がこうして出会ったのはつまり必然ということだ」

 運命という言葉とも似て異なる必然。
 その言葉の強さに莉桜は戸惑ってしまう。
「本当は視察のこと知っていたんじゃないですか?」
「視察のことはもちろん知っていたさ。けれど会えるとは思っていなかった。だからこそ必然だというんだよ」
 必然だから、なんだというのだろう?
「必然だから……なんですか?」
「今度君に会ったら言おうと思っていた。俺と付き合ってくれ」

「はい?」
 突然の交際の申し込みに莉桜はどう返事してよいか分からなかった。
「聞こえないか? 近くで言おうか? それとも誰かと付き合っているか?」
「聞こえてます……。あの、なにかの間違いじゃないですか?」
「君に言っているよ、倉木さん」

 決して莉桜に触れてはいないけど、その腕の中に閉じ込められて、耳に近いところで囁かれる。
 耳に息がかかって、ぞくっとした。
「ダメかな?」
 そして五十里はすこし離れて莉桜の顔を見た。
 顔が真っ赤なのは自覚がある。
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