エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
「はい。あの、でもお忙しいのでは?」
「忙しいな。けれど可愛い恋人のために時間を作ることは構わない」
 この人が恋人……なかなか実感は湧かないけれど、こうやって迎えにきてくれたり、一緒に食事へ行くのは確かに間違いなく恋人としての優しさだ。

 ──大事にされている。
 そう思うと莉桜は嬉しくて、五十里を愛おしく思う。
「嬉しいです」
「よしよし、少しずつ素直に甘えるようになったな。もっと甘えていいぞ」
 なんだか自分があまり懐かないネコにでもなった気分だ。
 この人には素直に甘えていい。そう思えることもくすぐったくて、幸せな気分だった。

「私、さっき五十里さんの車を見つけて嬉しかったです。それって甘えてるってことじゃないんですか?」
 莉桜がそう言うと五十里は運転席から手を伸ばし、わしゃわしゃと莉桜の頭を撫でる。
「そんなことを思っていたのか。たまらない。可愛いよ、莉桜」

 急に名前を呼ばれてどきんと胸が大きく音を立てた。
「なんだ?」
「いえ……名前で呼ばれてちょっとどきっとしてしまっただけです。それだけです」
「ふうん? 俺のこともいつか名前で呼んでほしいな。もちろん今でもいいが」
「それは無理です……」
「じゃあ、いつか」
 そう言って笑う五十里はとても幸せそうに見えて、莉桜はこの人をもっと笑顔にしたいと心から思ったのだ。
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