エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

5.

 車を走らせながら五十里は今回の乗務のことを聞いてくれた。
「今回の乗務はどうだった? 問題はなかったか?」
「大丈夫です。九州でお客様の搭乗がちょっと遅れましたけど、ディレイするほどではなかったですし」
 平日の夜便なのでビジネスのお客様が多かったせいかもしれないが、ディレイと呼ばれる遅延も発生しなかった。
 それに加えて今日は天候も安定していたので、定刻運航で非常に安定していたフライトだった。

「天候も安定していましたし、サービスも問題なかったですね」
「それは良かった」
「天候が安定していないと、サービスしようとカートに全部載せて準備も完了したのに、いざサービスって思うと揺れが発生してサービス中止になってカートの中のものを再度しまい直す……とか結構あるあるです」

 国内の飛行の場合、飛行時間の関係でサービスは軽食のみということも多いが、一時間ちょっとの飛行時間では着陸時離陸時以外の安定したサービスに使える時間は当然一時間もなく、慌ただしいサービスとなる。
 しかし、その慌ただしさは決して乗客には見せないものだ。
「カートに置いておくわけにはいかないのか?」
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