エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない
 五十里は慣れたようすでフロア係に声をかけ、注文をする。
「ワインはどうする?」
 客室乗務員の中にはワインソムリエの資格を持っているものもいるが、莉緒はあいにく今勉強中というところだ。それでも社内の研修に積極的に参加はしていた。

「そこまで詳しくはないのでお任せしたいです」
「まあ、ソムリエの選択は勉強になるからな。すまないがソムリエを呼んでもらえるか?」
 五十里が言うと、フロア係は微笑みを絶やさず「承知しました」と返事をして下がっていった。

 その後はテーブルに来てくれたソムリエと話しながらワインを決めてゆく。
 ハーフボトルで前菜とメインではワインを変えることにした。前菜の時はフレッシュな口当たりのブルゴーニュ産の白ワイン、メインの時はミディアムボディのボルドー産の赤ワインにした。
 テイスティングの仕草も五十里は堂に入っていて、莉緒は見とれそうになる。

 ソムリエが綺麗な仕草でワインをグラスに注いでくれた。
「乾杯ですか?」
 莉緒が聞くと五十里から「Cheers?」と返ってくる。綺麗な発音だった。莉緒も英語は普段から使っているのだから「Cheers」と返す。
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