エリート役員は空飛ぶ天使を溺愛したくてたまらない

6.

「クラブフロアのラウンジなんて初めてですけれど、インテリアもサービスも素晴らしいですね」
 食事をしながら、莉緒は五十里にそう話しかける。五十里も満足そうだった。
「普通のレストランは慣れていてつまらないんじゃないかと思ったんだが、ここにして正解だったな」
「慣れてつまらないってことはないですよ。どこのレストランにお邪魔してもサービスを提供する立場としてとても勉強になります」

「本当に勉強熱心だな」
 莉緒の話を聞きながら五十里は感心している。
「多分、客室乗務員はみんなそうだと思います。素敵なお店があると情報を共有するんです」
「そういえば、みんな仲がいいとか一緒に行動するイメージだな」

 それはそうかもしれない。同僚は一緒に飛行機を飛ばす仲間でライバルではない。これは入社の時から徹底的に叩き込まれるものだ。
「飛行機を飛ばすことや、安全のためには協力することや共有がとても大事だからかもしれません」
「確かにそれはそうだな。一般の会社員より結束が固くなるのは職業柄かもな」
 すんなりと莉緒の話を理解してくれるのは五十里がJSAのことをよく知っているのもあるかもしれない。

「五十里さんはいかがなんですか?」
「基本的には同僚はライバルだ。協力もするが足の引っ張り合いもない世界ではない。生き残りが厳しい世界だよ」
 さらっと言っているが、そんな中で五十里はまさに勝ち組ともいうべき立場なのではないだろうか。
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