嘘も愛して
第2話 登竜門、序列戦
地元のヤンキーが己の実力を知るため万葉高校に入学するのは、登竜門と呼ばれるが故だった。
新学期から約二週間後に行われる、序列審判戦が各々の価値を決める催し物となる。
序列戦は各年ごとの総当りトーナメント式となっいる。
クラスには三種類の人間がいる。一つは、喧嘩だけに生きるヤンキー。二つは、中立を保つ者。三つは、蚊帳の外、存在すら認められない者。
私は今、存在を認められていない、どころか完全に否定されている存在。
この序列戦は結果こそが真理。存在を証明するには、ひたすら勝ち上がるしかない。
――――二週間後
会場は体育館で、ギャラリーによって熱気に包まれている。
序列戦は、二年生、一年生、三年生の順に総当たりとなり、ニューフェイスである一年の番はなかなかに人が集まる。
目立ちたくないなぁ。
存在を証明するためにアピールしないといけないのは分かるけど、大勢の視線を浴びるのだけは苦手で、私は隅で縮こまっていた。
「お嬢さん、もしかして出るのぉ?」
緩い声がかかり、聞き覚えのある声主を見上げた。くせっ毛の髪を、今日はターバンで止めている。
「一応……」
「ふぅん。なんていうか、ミステリアスだよねぇ。どうせやるなら僕、お嬢さんの殺りたいなぁ」
「あはは……」
から笑いをすると、少年はだぼだぼの袖をふりふりし、群衆の中に姿を消した。もうすぐ、始まるからだ。
名前を呼ばれるまでの間、私はちらちらと他の人たちの戦いぶりを遠目で見ていた。
男の子らしい、暑苦しい試合ばかりが繰り広げられていて、負けた者には罵声が、勝ち残った者には歓声が飛び交っている。
私はどちらも嫌だなぁ……なんて思っていると、前一つの物語が終わり、次の組み合わせが発表される。