嘘も愛して
桜は、淡く儚い。
別れと出会いが折り重なるこの儚い季節に、私はまだ一歩を踏み出せずにいた。過去をひきづり、未来を見据えずただ、今を息している。
周りは野心と欲望に満ちた獣達で溢れているというのに。今日はいつにも増して喧騒に包まれていた。
その理由は明白で、私は今、その理由を招く準備をしていた。そう、今日は新一年生の入学式。
ここ、万葉高校は地元では有名なヤンキー高校。
自分の腕を確かめるべく、あるいは現トップチームに入るため、あるいは、全てを破壊して己を示すため、あらゆる理由で喧嘩好きな高校生が集まる。
今日は一波乱、どころでは済まされないくらい収集がつかないことが起きる。
こんな決まりきったことを周知の上で、入学式の手伝いをする物好きはまぁいなくて。
私の名前は保泉仁彩。今年で高校二年生になる。
志高き同級生は皆、新しい面を睨み倒しに行くことしか頭になく、極少数のまとまな生徒はこんな危険な日にわざわざ学校に来たくもなく。
私は一人でせっせっと体育館で準備を進めている。
早めに来たし、出くわさずに済むよう早く終わらせよ。