嘘も愛して
「ちょ、ちょっとこんなところで喧嘩しないで」
「仁彩、あんたはこいつの手を取るのか」
「え」
「お嬢さんは僕の味方だよ〜」
「おうおうおう、俺らも混ぜてくれよ」
怒涛の展開に更に荒らしに来た城野兄弟。
「お?保泉、うちの大将の試合でも見に来たか?くっくく」
兄の方は私を壊れてもいい玩具のように見つけ次第握り潰そうとしてくる。
「……私を怒らせたいの?」
「い〜や〜?あー、でもそれもいいな!俺は命令には従うけど個人的にお前さんに興味あるしな」
探りを入れるように好奇な目で舐め回してくる。今にもあちこちで拳が飛び交いそうな殺伐とした空間になってしまった。
「こいつにちょっかいかけていいのは俺だけだぞ、クソ共」
空周も意気揚々と睨みを利かせ、
「そうですよ!空周の邪魔するとか能無しですか?君たち」
主人がやる気なら犬も吠える。
もう何がなんだか……。
異様な空気が流れ、誰が誰と揉めてもおかしくない一触即発な状況。
そんな空気を変えたのは、突拍子もない、だけど確信をつく言葉だった。
「仁彩。あんたクソザコ皇帝のなんだ?」
「それは……」
その場にいた殺気立った面々を一同に黙る。
それほど、空周の一言一言は重く、威厳があった。一同の視線は私に注がられ、重圧がかかる。
だけど、そんなことがどうでもよくなるほど、彼の視線が捉えて離さない。
「なら勝負しろ」
「勝負?」
多方面から一触即発だった場が、完全に空周と私の二人にかっさらわれていた。
「俺とタイマンしろ。俺が勝ったら洗いざらい話してもらうぞ」
そんな急に……。でも、空周の実力を体感できるチャンス……!
「いいよ、しよっか、タイマン」
私は自信満々にのり、口元を思わず緩めてしまう。