嘘も愛して
第3話 流儀
三年生の序列戦が始まる中、場所を移した私と空周。そのタイマンを見物する人たち。
向かい合うとサァッと清々しいくらい気持ちのいい風が頬を撫で、髪を靡かせた。
顎を上げて見下ろしている王様は相も変わらず端正な顔立ちで、ただそこに立って風を受けるだけでさまになる。
「お二人さん準備はいいかー?」
城野兄がノリノリで仕切りをしている。空周は私から視線を逸らすことなく無言を貫いている。
「ほいじゃー、思う存分やり合ってくれ!」
押し切った……。
「そっちから来いよ、仁彩。踊ってやるよ」
「後悔させてあげる」
私は間合いをとるため半歩ひき、そのまま手を床についた勢いで回し蹴りをする。
彼は身軽にそれをかわし、長い腕を私に伸ばした。
!?捕まえるつもり?
尻もちをつきそうな低い姿勢の私の、寝首目掛けて腕が伸びてくる。が、向こうも半歩ひいた状態のおかげで届いてはいない。
その隙に体を翻し、背中を向ける。
後ろ首に、指先があたる。
と同時に、私は床に手をついた姿勢のまま今度は弾丸のような後ろ蹴りを腕にぶつけた。
「チッ」
乾いた舌打ちをしながら、腕を弾かれた彼はあいている左手で私の足を掴む。