嘘も愛して
「君が、折れたらどう?」
絶妙な間合いの取り方をしつつ好機を伺う私たちは、次第に汗をかき始める。
「チッ」
苛立ってきた……!そろそろ私の勝ちが見えてきたところで、手首を掴まれた。やっと捕まえた、そんな表情をしている。
お互い深く息を吐き、呼吸を整える。腕を振りほどくことは容易にできる。
この前のように。だけど、少し息が上がり、高揚している自分にふっと笑ってしまう。
「あ?何のつもりだ」
当然、気に食わないと言わんばかりに低く唸るような声を上げる。
そんな彼を上目遣いで見つめ、目を伏せた。
「分かった。でも、私のことは言えない。あの男がどういう男なのか、その周りにいる人たちの事も教える。それでどう?」
首を傾け、再び彼を見つめ、様子を伺う。
突発的な提案、俺様な絶対的自分主義の彼がのんでくれるかは賭けでしかないけど、高揚している分、そんなことはどうでもよかった。