嘘も愛して



 艶のあるふんわりとした黒髪を後ろで一つに編み込んだ髪が、体育館に零れさす朝日に照らさせる。

 色素の薄い髪は太陽に照らされると儚げに透けて見える。


 私は、ふと動きを止めた。時折胸がきゅっと苦しくなることがある。

 もう、三ヶ月もこの調子だ。儚げに見えるもの、感じるもの全てに反応してこの心臓は脈打つ。



 恋で傷ついた心は、新しい恋で埋めるしかない。誰かが言った、どうしようもなく救いのない言葉が頭をよぎる。そんな簡単なことじゃないのに、と失笑した、


 その時―――、


 キュッと体育館に響くシューズの裏が滑る音がした。

 途端に雑音が消え、時の流れがスローになり、全神経が逆立ち、心臓だけが早鐘をうっていた。



「……」

 彼は、一旦静止した後、何も言わずにその場を去った。

 私が振り向いた時にはもう、後ろ姿すらなくなっていた。


 そんなに、顔も合わせたくないんだ……。


 こんなことで、涙が溢れそうになる脆さに嫌気がさす。もう、別れて三ヶ月、新しい季節がやってきて、心機一転の好機(チャンス)だったのに。


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