嘘も愛して



 その頃、研真は教室に戻り、あるはずの姿が見当たらないことに焦っていた。

「あれ、お嬢さん……?あれ??」


 最近何かと絡みがある男の元に行ったのではと思い、研真は急いで一年生の教室へ走った。



「あ!いたいた!ルーキー!」

「何ですか、君は。気安く空周に近づかないでください」


「猫のくっつき虫か」

 開口一番に噛み付く面々。だが研真にとってそんなことはどうでもよくて。



「お嬢さんをどこやったんだよぉ〜。どうせあんたんとこにいるんでしょ〜」

 仁彩のことで頭がいっぱいだった。空周の前で力なく床に腰を下ろす研真を、王様は淡々と見下ろす。



「何言ってやがる」

「へ?」

 意表をつかれ、間抜けな声が漏れてしまう。



「空周があんな野良猫相手にするわけないじゃないですか、バカバカしい」

 そんな研真に容赦なく棘を吐く下僕。研真の反応を待つことなく、口を開いたのは王様だった。



「いるみ」

「はい♪」

「黙れ」


 名を呼ばれ、浮き足立って返事をしたいるみを、空周は低く唸るように制した。


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