嘘も愛して
温かくて逞しい腕の中で、私は少し眠気に襲われていた。
私を運ぶ足取りは緩やかで、気を使っているようにも思えて、胸がキュッとなる。
「いるみ!」
珍しく声を張った空周に、びくりと肩が震える。
びっくりした……。
空周って声荒らげることあるんだ。
「え…………あ、空周……そ、え、これはどういう」
いるみさんは端正な顔を残念なほど呆けさせていた。こちらを指さし、今にも崩れ落ちそうな足取りでいる。
空周はそれを一蹴し、いるみさんに私の足の具合を診るよう言い、私たちは誰もいない教室に集まった。
いるみさんは手際よく消毒し、包帯を巻いてくれた。抜き取った釘は血まみれで見るに耐えなかった。
「この釘持ってる女見ましたよ」
「え?」
もしかして、茂みに隠れていたのって……。
「お嬢さん大丈夫……?じゃ、ないよね」
泣きすぎて目が腫れている研真が恐る恐る寄ってきた。ものすごく心配させちゃったかな。
「何があったの?」
私は真剣な面持ちで、呼び出しをされたことから誰かに釘を投げられたところまで説明した。