嘘も愛して
「なんだよそれ……!」
「いるみ、さっき言ってた女は誰か分かるか」
「いえ……ただ、ある話を聞きまして」
いるみさんは私の名前が上がった教室での話をしてくれた。
それってたぶんあのクソ男とその親友だろうなぁ。
「虫唾が走る話だね…お嬢さんをこんな傷つけられて、黙ってられないよ!」
「そうだな」
間髪入れず、空周が珍しく研真に同意した。
一同が目を見張り、視線が王様に注がれる。私は痛めた右足を擦りながら横目で彼を見やると、ぱちりと視線が合う。
え?
空周は目を細め、私を見て、
「俺が傍につく」
なんて、王子さまみたいなことを言い放った。
絶対俺様主義の王様が、私付きの騎士みたいなことを言い出した。
「一人で帰るよ」
「その足で?」
「…………」
「大人しく抱かれとけよ」
「っ!その言い方は嫌!だいたい、変な噂がたつよ。君は気にならないの?」
「は?クソほどどうでもいい。噂とかあやふやなもので俺を支配できると思うなよ」
「いいから送ってやるって」
この人に精神的に勝てる気がしない……。
無事、お姫様抱っこで下校した私は、次の日には噂が流れ、姫だ姫だと口々に言われるのであった……。