嘘も愛して
第5話 カリスマ
王子さまが地味で存在感のない女をお姫様抱っこをしたことはすぐ学校中に知れ渡った。それをよく思わない皇帝の親友は仁彩を呼び出していた。
「うずにぃ……?どうしたの?珍しいね、うずにぃから話しかけてくるなんて」
彼は元彼経由で知り合ったが、そこまで交友を深めたことはなかった。ましてや二人きりで会うなんて一度もない。なかったのに、何故か呼び出された私はひたすらにはてなが浮かんでいた。
相変わらず間合いめっちゃ取られるけど。女性苦手なの何とかしてほしいな……。
「あー、俺こういうの普段しないけど、あいつがうるさくてさぁ。ってことでバトンターチッ」
サササーっと、その場を退散したうずにぃこと宇津弥彦に、私は呆気を取られてしまう。
「へ」
代わりに、別の人影が姿を現した。文字通りバトンタッチだ。
「仁彩」
「……」
最悪最悪最悪、もうどうでもよくなりたいのに、対面したくない、逃げたい、ていうかもう半歩ひいてる。
そこには、もう見たくもない男が立っていて。ゆるめのロングウルフにセンター分けの金髪。少し妖艶がかった目元。司堂楽は、私を蔑んだ目で、刺すような声色で、そこに立っていた。
「新しい男に乗り換えたんだ、この浮気女」
「っ……!」
この感じ、嫌な記憶がどっと溢れ出てくる。幸せよりも勝ってしまった、許せないこの言いがかり。
私は逃げ出しそうになっていた体を持ち直し、静かに口を開いた。
「ほんと、変わらないね。まだ、お前が悪いお前が悪いって言うんだね」
「浮気する方が悪いに決まってるだろ」
「……そう。そう思いたいだけでしょ……貴方が一番よく分かってるはずだよ」
「変わってないのはお前の方だ」
もう、話したくない。昔みたいに、お互い一歩も譲らず言い合う……繰り返しを。
「私たちは離れるべきだった。なのにずっとずるずる引きづって甘えて、もうあの頃には戻れないって分かってるでしょ?いつまで大事な人を傷つけるつもり?今貴方を想ってくれてる人に、失礼だよ」
あぁ、今までしまい込んでた気持ちが溢れて、止まらない。