嘘も愛して
「貴方は変わったよ。本当に、いい方に。私はそう思う。私を踏み台にして、もっと、幸せになってよ」
「はぁ?お前が捨てたんだろ。」
「俺は誰とも付き合う気はないよ。うずにぃにもそう言ってる。仁彩が悪いところ治せば復縁だって嫌じゃない」
「……菊池ちゃんに、言って。私に言う必要ないよ」
私は半ば強引に切り上げ、背を向けた。そのまま何も言ってこない彼を振り返ることなく、校舎へ戻った私は、見知った顔に足を止める。
空周…?
「仁彩、何故あんなことが言える?憎い相手だろ、そんなクズに幸せになってほしいと、本気で思ってるのか?」
やっぱり、ここにいるってことは盗み聞きしてますよね。空周の悪びれる素振りもない潔さに、私は突っ込む気もなくし、彼の疑問に素直に答える。
「うん。幸せになってほしいよ。この結果に私は、ちゃんと意味があるって思っているから」
彼は、終始気に食わないと言いたげな顔つきで、ふんっと鼻で笑った。
「くだらねぇ」
「なによ、聞いておいて、全く……」
「あのクソダサ皇帝もどきに人が集まるカラクリがまるで見えねぇ……本当にあれがトップか?」
「……」
その疑問はご最も。そう、みんなにも見えるよね。だけど私は何も言えなかった。
「何か知ってそうだな」
「え……え〜っと」
「そのカラクリは仁彩、あんたが関係してるってことか」
「っ」
「分かりやすい目だな、仁彩」
「見ないで!意地悪」
確信をつくのが上手いんだから……。
私は手で自分の顔を覆っておいて、チラッと指隙間から彼の顔を伺った。
本物のカリスマはきっと……空周、君みたいな人のことを言うんだよ。
そう、心の中で呟いてそっとしまい込んだ。