嘘も愛して
彼女の視線は完全に私だけで、責め立てるように一方的な口調で起こっていた。
これが初めてのことではない。遠回しに似たようなことをされ続けられている私としては、またかとため息が出るだけ。何も言い返さない私の横で、研真が立ち上がった。
「は……?何、このイカレ女さん。僕の宝物に気安く話しかけないでくれないかなぁ……」
「何言ってんのよ!この前だって楽くんに会ってひどいこと言ったくせに!元カノのくせにいつまでまとわりつくのよ!」
あーもぉ、火に油を注いじゃった。額が当たりそうなくらい近づいていがみ合う二人。
「チッ……まぁじでどうでもいいんだけどぉ。とりあえず失せてくんないかな」
パッ…と先に離れた研真。腰に手を当て、手ではらっている。ちょっとカッとなったけど、すぐ興味をなくしたみたい。その余裕な態度に、彼女はたじろぐ。
「な、なによ」
それでも引き下がらない様子に、私は沸佛と込み上げてくる感情に押され、ぼそっと口が開いてしまう。
「君が……しっかりしてくれないから」
「はい?」
あぁ、相手にしないって決めてたのに。もう、止められなかった。私は彼女を冷めた目で見上げる。
「責任もってあのばかの子守りしてよ。いつまでも付きまとわれて迷惑してるのはこっち。あのばかは自分に都合のいい嘘しか言わないことに早く気づきなよ。それを全部私のせいにしてぶつけないで」