嘘も愛して



 さめざめとした目で彼女に思うことを吐き出した。彼女は予想していなかったのか、唇をひくつかせ、絶句している。

 あれだけきつい言葉を浴びせといてこのくらいで言い返してこないなんて。バカバカしい、見上げるのをやめてそっぽを向く。

 代わりに何故か研真が追い打ちをかける。


「そーだそーだぁもっと言っちゃえー」

 唇を尖らせる研真の腕を取り、私は引き離そうとする。これ以上関わりたくない。そんなことをしていると、別の声が入ってきた。


「また俺の陰口言ってんの、性格悪すぎだろ」

 あぁ、発狂しそう。声だけで誰か分かってしまうのも嫌だ。


「楽くん……!」

 彼女がふわふわのショートカットの髪を揺らし、弾かれるように振り返り、感嘆に似た声を上げる。

 姿を現しただけでメロついているお花畑さん越しに、金髪皇帝は私を見据えていた。


 否応に対峙することになった元恋人同士。もうあれから半年が経つというのに、未だいがみ合ってるとか超ダサい。
 私は研真と菊池ちゃんを挟んで横目に睨みつける。異様な空気が流れたその時、ザッ…と、足音が響いた。


「てめぇは俺の飼い猫にちょっかいかけんのが好きみたいだな……クソザコ野郎」

 また別の声が入ってくる。この声と口調、一人しか私は知らない。

「王子!」




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