嘘も愛して
クイッと顎を掴まれ、再び瞳が覗き込む。
なんなのこの人!私の都合なんてお構いなしに!
「離して。逃げてないし、答える義理もないでしょ?だいたい、関係性を聞いて君に何の得があるの」
つい、動揺で口数が多くなってしまった。彼はさも満足そうにニヤッと不敵な笑みを浮かべると、手を離した。
やっと解放された顎に手をあて、私は彼を下から精一杯睨みつける。何故か、負けたくないと血が騒いでいる。
「強気なばかは好きだぞ?」
ほんっとに!口が悪い、この人。
「俺があんたを欲してる、それにあんたは応える以外の選択肢は必要ない」
上から目線で私欲の怪物、傲慢さに呆れることすらめんどくさい。ふんっとそっぽ向こうとした時、
「俺にくだれ」
彼は寸分たがわず、そう言い放った。
その力強さの芯のブレない圧倒的な自信に、私は思わず目を見開いて、彼の存在を認めてしまった。
スラッと伸びる高い背、どっしりと構えた体格のいい姿勢、そこかしこから溢れ出る、絶対王者の貫禄。
何より魅せられるのが、あの目。注がれる視線は鋭いはずなのに、私はさっきまで抱いていた嫌悪を捨て去り、彼に魅入ってしまった。
これが、私の波乱の高校生活を活性化させてしまう、最悪で最高の出会いだった。