嘘も愛して



「いや、あんただから固執してやがるんだよ」

「?」


 確信を得ているように、そう言い放った。

 私だから?なんでそんなことが言えるんだろう。

 少し考えたが、答えは出なかった。怪訝そうに彼を見やると、空周はゆっくりと、思い返すように空を見上げながら話してくれる。


「あの日、あの野郎を初めて見た時、あいつは仁彩、あんたを見てクソだせぇ面をしてた。声をかける度胸もヘタレに好かれて大変だなぁ、仁彩」


 おちょくるような目が返ってくる。小馬鹿にする彼に、私の中のいたずら心が踊り出す。



「なら、君が奪ってよ」



「!!」

 その場の誰もが、目を見張った。

 お、お嬢さん?!と驚く研真。君ねぇ……と呆れるいるみさん。ひゅう〜!と囃し立てる音海さん。絶句する百道くん。


 彼らに視線を送ることもせず、私はただ一人、私を細めた目で見下ろす魔王を見つめる。

 おちょくったつもりだろうけど、頭を突っ込んできた君にも責任はとってもらうよ。そんな好戦的な眼差しを向けていると、雅に口が開いた。


「……後で来い」


 ……ん?予想を通り越した返答。瞬きが多くなってしまう。ぽかんと力の抜けた口からは、

「へ」

 短く、間抜けだな音が出てしまう。



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