嘘も愛して
第7話 夏に咲く太陽
「ちょっと、空周!」
腕を引く力は思ったよりも痛くて。力の加減を知らないのかと思わせるほどだった。
そりゃ体格差もありすぎるけど、毎度この強さで引っ張られるなんてたまったものじゃない。
だけど、何故かその手を振り払う気にならなかった。手を引く大きな背中は、どうしてか、放っておかなかったから。
私は黙って彼の赴くままに身を任せた。
少し歩いて、ふと歩調を緩める。くるりと雅に振り返り、空周の端正な顔に照らされる。
いちいちかっこいい……。
見惚れてしまうほどの色男は、形のいい唇をニヤつかせている。
「リーダーとして命令」
急に権限振りかざしてきた!何を言われるのかと身構え、思わず眉を下げ、上目遣いで見つめてしまう。
「夏休み、俺の相手をしろ」
「……はい?」
「あんたが言い出したんだろ。奪ってやるよ」
あ〜そういうことか。そこで漸く空周の思考を理解する。いや、したくないんだけど。
「えっと、相手って具体的に?」
「あんたと恋人らしいことしてやるよ」
「……」
思わず絶句してしまう。何を言い出すかと思えば。
「なんでそうなるの……」
やれやれと首を振る。空周が何を考えているのかと眉をひそめた。
「なら」
ドンッ
壁を叩く音。ふわっと香る男前の色香……。
吸い寄せられる、獣のように鋭く、綺麗な瞳。自然と見上げたその顔は、何故か寸前に迫っていて。