嘘も愛して



 顔近すぎ……。

 っていうかこれ、壁ドンってやつだ……!しれっとこんなことするなんて、やっぱり王子……。


 王子はゆっくり口を開いて、吐息がおでこにかかる。

「どういうつもりで言ったんだよ」


 それは……。おちょくり返すためとか言えない、間違いなく殺られる……。

 少なくとも、目の前で私を見下ろす彼はいつだって私をねじ伏せれる。だって、覆い被さるように、包みこめるこの体格差。


 この人は嫌という程、私がか弱い女だと思い知らせる。つい、反発したくなる。


「分かった。命令だもん。でも、私は甘くないよ」

「あ?」

「とことん付き合ってもらうからね!夏休み、覚悟しといてよね!」


 勢いで、妙な約束をしてしまった。付き合ってもない、まだ出会って日の浅い人と恋人らしいことをするだなんて。


 私の一歩も退かない様子を気味悪がったのか、空周は壁から手を離し、身を引く。通常の距離感で尚も私を見下ろしている。


 何を考えているのか、探るような目で。



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