幽霊鬼ごっこ
名前
信一が鬼になってからの10分は今までで一番簡単な鬼ごっこだった。
緑鬼の操縦がうまく行かないのか、男の子の方が苦戦していたくらいだ。

「今日の鬼ごっこはこれで終わりだよ」
そう言ったときの声もどこか不服そうだった。

もしかしたら鬼の中の信一が必死で抵抗してくれたのかもしれない。
「今日は……名前を呼んでくれてありがとう。じゃあ、また明日ね」

男の子はそう言って緑鬼と共に姿を消したのだった。
「名前って?」

直人に聞かれて私は今日の出来事をふたりに説明した。
男の子の名前は森慎吾。

ここからまたなにか調べだすことができるはずだ。
「1人だけ逃げちゃってごめんね?」

今日学校を休んでいた由紀が申し訳無さそうに言う。

「ううん。あんな目に遭ったんだから仕方ないよ。でも明日はちゃんと学校に来て、調べ物を手伝ってくれる?」
「もちろんだよ」

由紀は大きく頷いたのだった。
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