ハイスペ上司の好きなひと
忘れられない人



暦では4月を迎え、この会社で2度目の春を迎えた。

飛鳥の半年間に渡る引き継ぎも無事に終わり、今月からは本格的にこちらで腰を据えて仕事をする事になる。

年度末に大きな人事異動もあり何かとバタバタとした日を過ごしているうちにあっという間に4月も半分が過ぎ去り、最近では飛鳥より早く出社をするようになった紫が会社に赴くとそれまでずっと空いていた席に懐かしい人の背中を見た。


「おはようございます!藤宮係長!」


少し髪の短くなったその後ろ姿を見て思わずテンションが上がり、部署への挨拶も忘れてその人に駆け寄った。

そして予想通り、藤宮は優しい笑顔で振り返って言った。


「おはよう古賀さん。長らくお休みしてごめんね」
「そんなとんでもないです!今日からでしたね。…あれ?けど藤宮さん時短って伺ってたんですが早くないですか?」
「復帰初日だからね。登園は任せてこっちに来ちゃった」


のんびりとした口調も穏やかな笑顔も何も変わらない、居るだけで安心感を与えるなんて相変わらずすごい人だ。

ただ、本当に一つだけ小さな欠点を挙げるとすれば、藤宮は整理整頓が苦手らしくまだ出社して数時間だと言うのに机の上は色々な物でごった返していた。

視線の先を悟った藤宮は一瞬ぴたりと動きを止め、恥ずかしそうに笑った。


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