ハイスペ上司の好きなひと


飛鳥の部屋は12階、憧れのオートロックも完備された家だ。

部屋に通されれば聞いていた通りの2LDKの間取りだったが、何せ物が無い。

だだっ広いリビングにはローテーブルがひとつ置かれているだけだった。


「何も無いだろ」


頭の中を読まれたようで少し恥ずかしかった。


「主任ってミニマリストなんですか?」
「そうじゃないけど、帰ってきてから何かとバタバタして後回しにしてたらこのままになってた」
「成る程…」


何を優先するかは人それぞれだし、飛鳥の生活スタイルに口を出すつもりはない。

短く答えると、飛鳥が紫が使用していいという部屋へと案内してくれた。

6畳ほどの部屋で、荷物は何も無かった。

とりあえず敷布団と衣類必需品が置けそうなスペースはありそうで一安心した。


「共有スペースはどこまで触ってもいいでしょうか」
「基本的に制限をするつもりはないが…まあ料理なんかをする際の食材は各々が買い足す感じでもいいか?」
「分かりました。…因みに主任、料理はされますか?」
「俺はほぼしないな。分担制にするか?」
「いえ。退社も私の方が早いですし、せめてものお礼として食事くらいは用意させていただけませんか?」


そうお願いすれば、飛鳥は悩む事なく頷いた。


「ああ。そういうことなら頼む」



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