ハイスペ上司の好きなひと
そして次に意識を取り戻したのは、飛鳥が会社から帰宅した夜8時だった。
「古賀さん、いるか」
部屋のドアを叩く音に飛び起き、勢いよく返事をして飛び出した。
「す、すみません!寝てしまってました!」
紫の勢いに気圧されたのだろう、飛鳥は一瞬目を丸くしてその後軽く笑った。
「疲れてるだろうと思って弁当買ってきたんだけど、食べられそうか?」
「え!?わざわざすみません、えと…お金を…」
「いい。俺が勝手にした事だから」
「でも、」
「俺の顔を立てると思って、な?」
少し困ったように言うので、申し訳なさはあれど紫は肩を落としてお礼を告げた。
そのままリビングへと一緒に向かい、唯一の家具であるローテーブルに向かい合って腰を下ろして弁当を広げた。
「少しは眠れそうか?」
割り箸を割りながらそう尋ねられ、紫は肯定の返事を返した。
「快適過ぎて泥のように眠ってました」
「それなら良かった」
「主任…本当にありがとうございます。このご恩は必ず仕事で返します」
正座をして両手を膝の上に乗せて言えば、飛鳥は穏やかな表情を見せた。