ハイスペ上司の好きなひと
後で本屋にでも行こうと着替えもメイクも既に済ませていたので、小さなバッグに必需品だけ詰め込んで準備を整えた。
そうして共に家を後にして電車を乗り継ぎ、インテリア雑貨の揃う大型ショップへ向かった。
到着後、カートを引きながら大型の家具の揃うフロアへと足を進める。
「買いたい物は考えてらっしゃるんですか?」
「テーブルだな。ローテーブルだと床に座ることになって疲れる」
「…なんであれを選んだんですか」
確かに脚の長い飛鳥が高さの低いテーブルを使うのは体に負担がかかるだろうが、それならば何故それだけを買って置いたのか甚だ疑問だ。
「食事とか家で仕事する時に要ると思って適当にネットで買ったらあれがきた」
「椅子はどうされたんですか?」
「当然合わなかったから自室でベッドのサイドテーブル代わりにしてある」
「えと…椅子とセットのものを選べば良かったのでは…?」
「なるほど。確かに」
「……」
この1週間で少し思っていた事だが、飛鳥はプライベートについてはかなり無頓着…もしくは天然だ。
服は同じ物を何枚も持っているのかいつも同じ格好だし、家では眼鏡なのだがいつもどこに置いたか忘れて探している。スマホもそうだ。
オンオフの切り替えがしっかりしているという点では尊敬に値するが、これでよく海外生活をしてこれたなと思わざるを得ない。
ギャップ萌えと言えばそうなのだろうが、彼に完璧な王子様像を抱いている会社の女性達が素の部分を見たらどういう反応をするのだろうと若干の興味が湧いた。