ハイスペ上司の好きなひと
うわごと
そんな事があった翌週の夜、飛鳥が出張を終えて帰ってきた。
帰宅をしたのが夜も更けた22時で、紫はそろそろ就寝しようかと思いながら観葉植物についた埃を拭き取っていた時だった。
ガチャリと鍵の開く音がして間も無くリビングへ現れた飛鳥に視線を送り、紫はおかえりなさいと微笑んだ。
「長期出張、お疲れ様でした」
「ああ。…部屋、なんか明るくなったな」
荷物を置きながらリビングを見渡して飛鳥が言った。
「配置はこれで良かったですか?」
「大丈夫だ。任せてすまなかったな」
「とんでもないです。業者の方に全てやってもらったので私はお願いしただけですから」
再び視線を戻してさっきと違う葉を優しく撫でれば、飛鳥が歩み寄ってきた。
「世話もありがとう。名前は…フィカス、だったか?大変だったろ」
「そうでもないですよ。初心者向けの植物ですし」
「詳しいな」
「母の趣味がガーデニングで、家の中にも緑が溢れてましたから」
世話もよく手伝っていましたと言えば、飛鳥の口元が綻んだ。