ハイスペ上司の好きなひと


「このお店…」
「古賀が働いてた製菓店って此処だろ?」
「わざわざ行かれたんですか?」
「視察で近くの店に寄ったから、せっかくだと思って」


古賀の事覚えてたぞ、と飛鳥は付け加えた。


「評判良かったみたいだな。また顔見せに来てくれって伝言預かった」
「そうですか。なんだかそう言われると照れますね」
「古賀はいつも一生懸命だからな。誠意が伝わるんじゃないか」


そうじゃなきゃバイトに発注管理なんて任せないだろと飛鳥は言う。

尊敬する人に褒めてもらうというのはなんとも嬉しい事だ。

頬に熱を感じながらも、それを誤魔化すように手元の菓子箱に視線を落とす。


「俺の居ない間に問題はなかったか」
「はい、何も…」


ありませんでした、と言いかけたところで先日の給湯室での事を思い出す。

一ノ瀬の圧力のおかげであれから大っぴらにお願いされることは無くなったが、すれ違う際などには時折意味深な視線を送られるので彼女達も本心では諦めてはいないのだろう。

どれほど頼まれたところで詮索するつもりは無いが、何かあったかと聞かれればどうしても思い出してしまう。


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