ハイスペ上司の好きなひと
「…酔って寝てるだけ…?」
落ち着いて聞けば、すうすうと寝息を立てている。
それが分かった瞬間ホッと胸を撫で下ろし、けれど此処で寝させるのもマズいと思って強く叩きながら声をかけた。
「飛鳥さん!起きてください!聞こえますか?飛鳥さん!」
何度か声をかけたところで微かに目が開き、こちらを捉えた。
「起こしてすみません。けどここで寝ると風邪をひくので部屋まで移動してください」
「……」
言葉は伝わったのかこくりと頭が下がる。
けれど体には力が入らずぐったりとしているので紫は意を決して飛鳥の腕を掴み、自身の首の後ろへ回した。
「お手伝いするので頑張って歩いてください!」
声を張りながら全身に力を込めて立ち上がり、飛鳥もフラフラながら立つことは成功した。
そのまま時折よろけながらも何とか彼の私室までたどり着き、勝手に入ってすみませんと心の中で謝罪しながら初めて部屋のドアを開けた。
まあ予想していた通りの殺風景な部屋で、ベッドと前に言っていたサイドテーブル代わりの椅子、そして本棚に数冊の本があるだけだった。
ほぼ投げるようにベッドへ飛鳥を下ろし、コートを脱がせることは諦めて布団だけかけておいた。
夜中に目が覚めた時に必要かと思い冷蔵庫からペットボトルの水を取り出して再び飛鳥の部屋へ赴き、ベッド横の椅子の上に置いた。