ハイスペ上司の好きなひと
トラウマ
翌日の日曜日、あまり眠れなかった紫が目を覚ましたのは明け方だった。
しばらく布団の上で寝返りをうっていると、ドアの向こう側から人の気配がした。
どうやら飛鳥が目を覚ましたらしく、洗面所へ向かっているようだ。
間も無くしてシャワーの音が聞こえたので風呂に入ったのだろうと寝不足の頭で考える。
ーー気まずいな…
飛鳥は昨日の発言を覚えているのだろうか。
いや、あの泥酔具合からしてその線は薄いだろう。
ならば大人の対応として、何事も無かったように接するのがベターだ。
そんなことは分かっている。
けれど良くも悪くも感情に素直な自分は、飛鳥の顔を見て終えば何かしらの反応をしてしまいそうで怖かった。
そのまま布団の中で過ごし、時刻が8時を回ったところで流石に起きねばと思い体を起こした。
頭は鈍く体も重いが仕方がない。
のそのそと時間をかけて私服に着替え、自室から出て廊下を抜ければ飛鳥がテレビの前のソファーで項垂れているのが目に入った。