ハイスペ上司の好きなひと



「私の持ってる薬でよければ飲まれます?」
「…悪い、もらって良いか」
「もちろんです。何か食べられそうですか?胃が荒れないように何かしら入れておいた方がいいとは思いますが」
「戻すの怖いからやめとく」
「では水分を沢山摂ってくださいね」


薬を取ってきますと言いリビングを後にしようとした紫の背中を引き留めるように「古賀、」と声がかけられた。


「水置いておいてくれたの古賀だよな?俺、昨日何か迷惑かけなかったか?」


昨日の出来事を彷彿とさせる言葉に一瞬身体を硬直させたが、すぐに笑顔を作って振り返った。


「迷惑というか…玄関で寝てしまわれた時はさすがに焦りました」
「すげえ迷惑かけてるじゃねえか」
「少し肩は貸しましたけど、きちんと自分で歩かれてましたよ。水はただの私のお節介です。勝手に私室に入ってすみません」
「いや不可抗力だろ。悪かったな」
「いえ」


再び踵を返し、見えない位置で短いため息を吐き、部屋から薬を取って飛鳥に渡した。



< 62 / 223 >

この作品をシェア

pagetop