ハイスペ上司の好きなひと


少し前だったらこの気遣いも嬉しく感じられたのにな、と心の中で思いながら返事をした。

その時ちょうどお湯が沸き、飛鳥は再びキッチンへ向かいティーバックで緑茶を淹れて持ってきてくれた。

緑茶の温かさにホッとひと息ついていると横から飛鳥の視線が突き刺さってくるのを感じ、居心地が悪くなり「なんですか」と若干引き気味に尋ねた。


「古賀は強いな」
「はい?どうしたんですか急に」


唐突な台詞に訳が分からず目を丸くした。

その表情を見た飛鳥は視線を逸らすことなく苦笑して見せる。


「普通女性があんな目にあったら泣くだろ。なのに古賀は泣くどころか涙の跡すら無いなと思って」
「あ…。…はは、可愛げないですよね」


ここで涙のひとつでも流せば飛鳥の気持ちが揺れてくれるんだろうか。

そんなありもしないタラレバを考えては、何でもない事のように笑いかけた。



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