ハイスペ上司の好きなひと
出張



その翌月、相も変わらず無謀な恋を諦めないでいる紫は会社で飛鳥と共に課長に呼び出された。


「お前ら、ちょっと支社のヘルプに行ってくんねえ?」


開口一番そう告げられたのは突然の出張命令だった。


「飛鳥は先週帰ってきたとこ悪いけど、俺の言いたい事分かるよな?」
「はい。なかなかの状況でした」


曰く、バカンス大国の名に恥じぬと言わんばかりにバカンスを申請する者が重なり、そのタイミングで納品先に商品の原価を記載した書類を送るという洒落にならないトラブルがあったらしい。

とりあえず場を納めて帰ってきた飛鳥だったが、そのミスをした張本人が飛んで出社しなくなり、現在あちらを統括している支社長から泣き言の連絡が課長の元に来たそうだ。


「今は猫の手も借りたい状況だそうだ。簡単な書類作成ならフォーマットも大きく変わらんし古賀も対応出来るだろうから一緒に行って手伝ってやってくれないか?」
「はい。けれどこちらの仕事はどうしましょう?」
「それはこっちでなんとかするから心配すんな」


そう言ったところで課長のスマホの電話が鳴り、「じゃあそーいう事だから頼むわ」と言い残して忙しなく出ていった。


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