ハイスペ上司の好きなひと


部署に隣接された外も中も丸見えの会議室に2人残され、さてこれからどうすればと思ったところで飛鳥が声をかけてきた。


「出張は明後日から1週間だ。飛行機と滞在するホテルの予約、あと出張費の申請を頼めるか」
「いつも主任の分を手配しているので大丈夫です」
「助かる。目を通して欲しい書類なんかは後で共有ファイルに置いておくから出国までに確認しておいてくれ」
「かしこまりました」


確認事項を話しながら飛鳥と共に会議室を後にしてデスクに戻り、期限の迫っている仕事を猛烈な勢いで片付ける事数日。

紫は約1年ぶりに懐かしい土地に足を踏み入れた。


支社の事務所は首都パリの中心部からは少し離れた所にあるが、12月ともあればすっかり冬景色になっている為冷え込みはきつかった。

けれど建物に一歩入って終えば汗ばむほど暖かく、紫は首に巻いていたマフラーをキャリーケースの持ち手に巻きつけた。

飛鳥に言われた通りの場所に荷物を置いて必要最低限だけ持って事務所のドアを開ければ、大変な状況だと言うのに部屋の中は閑散としていた。


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