ハイスペ上司の好きなひと


「礼ならこちらもだ。慣れない環境でよく頑張ってくれた」
「でも、皆さんとても親切でした」
「それは古賀の頑張りが伝わったからだろ」


案外人たらしだよなと言われ、褒められているのか揶揄われているのか微妙な気持ちになった。

本当にたらし込みたいのは貴方なんですけどねなんて口が裂けても言えないが、今はそんな事どうでもいい。


このプレゼントに一体どれほどの意味があろうが、そこに部下以上の気持ちが無かろうが、今だけはそれで良かった。

紛れもなくこれは、自分の為に贈ってくれたものだから。


ずるい人だと思う。酷い人だとも。

それが分かっていながらプレゼント一つで舞い上がってしまう自分も大概だと思うけれど、それでもこのままこの人を想う事を許された気がした。

もう覚悟を決めるしかないのかもしれない。

望みは殆ど無い。

けれど諦める事も出来ないのならば、いっそボロボロになることも厭わず茨の道を進むという覚悟を。


そんな口にできない思いを胸に秘めたまま、人知れず紫はその覚悟を心に固く誓った。



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