ハイスペ上司の好きなひと


そしてもうひとつ、こうなってから毎月月末には家計簿をつけるようにしているのだが思っていたよりも引越し用の積立が順調に貯まっている。

それはそうだ。

食費をもつと言っても飛鳥は月の半分はこちらに居ないし、居たとしても会食やら接待で駆り出される事が多い。

昼は基本別だし紫も普段は少食の部類なので元々支出の多くを占めてはいなかった。

また元の家の家賃もかなり安いので必要最低限の購入品以外の給料をそれに充てていればすぐに目標金額に届くだろうとは思っていた。

このままならばあと半年もしないうちに引越しの目処が立ちそうだ。


飛鳥との繋がりがひとつ減ってしまう事の寂しさは否めないが、見方を変えれば外を見る良い機会だ。

もしかしたら、飛鳥を諦めるキッカケができるかもしれない。

困ったように笑いながらそんな思考を巡らせ、リビングのテーブルを借りて電卓片手にノートにつらつらと金額を書き込み、今月分の家計簿を締めたところで顔を上げた。

壁にかけられた時計は11時を指していて、この時間まで起きてこないのは初めてだなと少し不安になる。

声をかけようかどうしようか迷っていると、リビングに直結する飛鳥の部屋のドアが不意に開いた。


< 91 / 223 >

この作品をシェア

pagetop