ハイスペ上司の好きなひと



「え?」


呼び止められた事が意外過ぎて中途半端な体勢のまま飛鳥を見つめる。


「あ、いや…直ぐに食べ終わるからそのまま待っててもらえないか…?」
「…分かりました」


別に急ぐ用事も無いので再び床に正座して座り直した。

これは所謂あれだろうか。

風邪を引くと気が弱くなるというやつか。

相変わらず可愛い人だなあと思いながら黙って眺めていたのだが、レンゲで掬った粥を冷まそうと息を吹きかける度に飛鳥の眼鏡が曇るので次第になんだかおかしくなって笑ってしまった。


「どうした?」
「すみません。眼鏡が湯気で曇るのが少しおかしくて。見えにくくないですか?」
「ああ、確かに」


眼鏡を取ると、いつもの美しい顔が惜しげもなく顕になる。

もちろん眼鏡姿だって男前には変わりはないけれど、何せそのデザインというのが何故それにした?と聞きたくなるくらい違和感しかない黒縁の丸眼鏡なのだ。

きっと適当に選んだのがたまたまそれだっただけだと思うけれど、もう少し自分の容姿の良さを自覚して欲しいものだ。


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