ハイスペ上司の好きなひと
「…古賀は」
「はい?」
ぼんやりと考え事をしていたところを呼ばれて意識を戻す。
器を見ればほぼ食べ終わってはいるようだが、その手は今は止まっていた。
「あまり外出していないように思うが、俺と2人で息苦しく無いのか」
「突然どうしたんです?」
「前に話したと思うが…この数ヶ月、支社での引き継ぎの為に定期的に行き来してたがそれがようやく終わりが見えてきた。多分次の出張が長期で席を空ける最後になる」
「そうなんですね!良かったです」
これで少しは飛鳥の肩の荷も降りるだろうと思うと、何故だか自分まで嬉しくなった。
「だから今後はこの家に居る時間も増えると思う。4月になればもっと楽になるだろうしな」
「ああ、藤宮さんが戻ってこられますもんね」
そう言えば肯定するように飛鳥の首が縦に動いた。
「正直、俺は助かってた。いつ帰っても部屋は綺麗だし、食事の用意までしてくれて。…それに今だって、迷惑をかけたのにこうして世話を焼いてくれて」
飛鳥の言葉を聞きながら、呼び止められた理由がなんとなく分かってきた。
きっとお礼を伝えようとしてくれているのだろう。
居候として当然の事をしているだけなのに改まって言われるとむず痒い。