とある男アイドルの活動日記
1月××日、土曜日。


俺は先週の出来事なんてすっかり忘れ、部活に没頭していた。

帰り道、ふと友達に言われた言葉。

「お前、スカウトどーしたん?」

それ聞いた瞬間、あっ!って思ったけど、スカウトなんかうける気全くなかったから、別にいいかって。

でも友達は、「いやいや、折角のチャンス逃してんじゃねぇよ!」ってごり押すから、冷やかしも兼ねて、部活の2年メンバーでそのファミレスに向かってみたんだ。

友達はドリンクバーを頼んで、みんなでテーブルに座って、しょーもない話をしていたら。

「先週の子だよね?」って声掛けられて。

バレないように、1番端っこに座って、キャップも被っていたのに。

なんでバレたんだ……。

「ちょっとこっちの席で話そうか」

別のテーブルに向かい合って座って。

「この前も言ったけど、君にアイドルになってほしい」

そう切り出されて。

「いや、なりたくないです」

って答えたら、「どうして?」って聞かれたから、

「ダルいし、お金稼げないし、女とか嫌いだからです」

って正直に答えたんだ。

そしたら、「君ならイケメンだからお金なんてたくさん稼げるし、配信とかなら自分のペースで投稿できるから楽だし、女の子は多少の愛想であっという間に君のお財布になってくれるよ」って熱弁された。

俺のお財布って響きはすごいよかった。

「年収いくら稼げる?」

1番気になってた質問を投げたら。

「多くて○○万円とかかな……ウチは大手の事務所だから、スタートからかなりのハンデだよ」

やばい、好条件すぎる。

あと少ししたら俺も高校生で、18歳になったらもう立派な大人。

なのに中学生から稼げる?

なんだそれ。

すごすぎるだろ。

やっぱり人間、お金には変えられないんだよな。

俺は家に帰って即親に相談。

顔出しNGなどの条件付きでOKを貰い。

俺は芸能界に足を踏み入れた。
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