恋するマリネ


そのアタシが大好きだったお父さんは
大学のオーケストラでクラリネットを吹いていたの。




アタシの部屋の本棚の横には
そのお父さんの形見のクラリネットがある。






もう壊れちゃってて…
まともには吹けないけど。



チューニングベーの下の
「シ」の音だけが出ない。


それでもアタシにとっては
大切なクラリネットなの。





大好きだったらしいお父さんの形見だから、
何度か修理に出してみたけど…
直ることはなかった。






楽器屋さんも…不思議がっていた。




別に悪いとこないんだけど…って。




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