恋するマリネ
初バイト
その日の帰り道…アタシは駅前大通を自転車を押しながら帰っていた。
なぜかというと…その日からクリスマス用の100万個の電飾が駅前大通の街路樹を着飾っていて…それが見たい…ただそれだけが理由だった。
どうせならケンシローと…って思いながら…電飾のきらめくウインドウを眺めていたら
一軒の洋服屋さんの前で…アタシはくぎづけになってしまった。
アタシの目に飛び込んで来たのは一着の男性用のスーツ。
父親の愛情を余り感じずに育ったせいで…昔から黒っぽいお洒落なスーツを着こなしている男性が好きだった。
よくファザコンなんて言われたりもしたけど…仕方ない。
それでアタシがウインドウに近付きしばらく眺めていると
その細いモスグリーンのピンストライプが素敵な黒っぽい3ピースのスーツがアタシを引き付けて離さなかった。