狐火

 毎日のように話をしても、全然話題は尽きなかった。


 私の学校のことや趣味のこと、村に伝わる昔話など、夜通し話し続けていられそうな勢いだった。


 ヤコは名前もそうだけど、話し方も中性的だった。

 常に穏やかで声を荒らげることはないが、かといって平坦で無感動な口調でもないという微妙なさじ加減だ。

 ちょくちょく日本語を間違えるものの、言葉遣いは丁寧で、落ち着いた気品すら感じられる。


 ヤコは聞き上手だった。

 大した内容ではないことも、ヤコはいつも真摯な態度で聞いてくれた。

 私の言葉の一つ一つを大切に扱っているような、そんな繊細な雰囲気。

 学校の友だちと話すのとはまた違った気分だった。


 そんな彼だからこそ、異性と話すと変に緊張してしまう私でも楽しく会話できたんじゃないかと思う。
< 14 / 35 >

この作品をシェア

pagetop