狐火

 そして夏祭りの日はやって来た。

 今日だけはなずなの世話は免除され、叔母に浴衣と信玄袋を貸してもらった。

「香織ちゃん、本当に一緒に行かなくていいの? 一人で行くの?」

「まあ、友だちがいるんで。叔母さんは叔父さんとなずなちゃんと三人で行ってきて大丈夫です」

「友だちできたんだ! ……ってことは、夕方出歩いてたのもその子に会うためだったり?」

「ええ、まあ……」

「なーんだ、だったら散歩なんて言って隠すことないじゃない!」

 叔母に肩を叩かれ、私は「ははは」と引きつった笑い声を上げる。もはや笑い袋と変わらなかった。

「それならその子と行ってきな! もうすぐ帰るってことも、ちゃんと伝えなさいね!」

「はーい、行ってきまーす」

 私は叔母に返事をして、家の外へと駆け出した。
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