狐火
「それにしても、屋台多いなあ。昨日までの静けさが嘘みたい」

 相変わらず独りごちながらヤコを探す。

 いつもなら閑散としている田舎の道が、今日はやけに賑わいを見せていた。

 ここ、そんなに人いたんだ。

 私は基本的に叔母さんたちとヤコしか知らなかったので、なずなより少し歳上の子どもや、同い年くらいの女の子が結構いたことすら知らなかった。

「あ、ヤコ!」

 わたあめの屋台の近くに見慣れた男の子の姿を見つけ、急いで駆け寄った。

 ヤコは小さく片手を上げると、私の方に向かって歩いてきた。

「香織。浴衣、似合ってるね」

「今日は誉めてくれるんだ」

「昨日あれだけ言われればね」

 金茶の目を細めるヤコは普段のカッターシャツを着ていた。ヤコも浴衣だったら良かったのに。

「それで、どこ行く?」

「縁日といえばまずは射的でしょ」

 いつも通り他愛もない話をしながら、私たちは射的の屋台へ向かった。
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