狐火
六
「香織ちゃん、支度できた?」
叔母の溌剌とした声に返事をして、私は玄関へ走った。
来た時と違い、なずなは叔母の後ろから手を振ってくれた。叔父は車の中へ荷物を運び込んでいる。
「どうだった? 香織ちゃん。結構楽しかったでしょ?」
「……そうですね。確かに楽しかったです」
また来たいとも思ってました。
……数日前までは。
「そっか、良かった。それじゃあまたね、香織ちゃん」
車に乗り込み、遠ざかる叔母に手を振った。
その間にも絶え間なく、十日前の自分の声が聞こえて来る。
『それじゃあまたね、ヤコ』