狐火


「香織ちゃん、支度できた?」

 叔母の溌剌とした声に返事をして、私は玄関へ走った。

 来た時と違い、なずなは叔母の後ろから手を振ってくれた。叔父は車の中へ荷物を運び込んでいる。

「どうだった? 香織ちゃん。結構楽しかったでしょ?」

「……そうですね。確かに楽しかったです」

 また来たいとも思ってました。

……数日前までは。

「そっか、良かった。それじゃあまたね、香織ちゃん」

 車に乗り込み、遠ざかる叔母に手を振った。

 その間にも絶え間なく、十日前の自分の声が聞こえて来る。

『それじゃあまたね、ヤコ』
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